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ice of feelings (Archive)

by 畑中正人

アルバム「ice of feelings」が一斉配信されました。Apple MusicAmazonSpotifyGoogle Playなど各種音楽配信サイトからお聞き頂けます。また札幌のMUSEUM STORE限定でボーナストラック2曲を収録したCDも販売しています。アルバムは2015年の「Watering」以来になります。私の中でアルバム作りというのはクライアントワークとは違い「己」と向き合う時間が大半を占め、現状の自分自身への様々な角度からの確認作業という意味合いが強いわけでありますが、自分の場合、作っていると大抵楽しい気持ちがやがて億劫な気持ちになってきます。アルバム作りって本当に面倒くさい。才能もないし、発表したくない。出来れば逃げたいし、隠れていたい。しかも私の場合レコード会社と契約があるわけでもなく、誰からも頼まれているわけでも期待されているわけでもなく勝手にやっている身。この20年「鳴かず飛ばず」がもはや座右の銘と化していますから、何とか自分自身を追い込み、焚き付けながらも「まだ作るのか」というジレンマと神経衰弱の戦いです(こんな事を書きながらも楽しい事には違いないので創作意欲と体力が続く限りはアルバム作りを継続するつもりです)。自分の中では2009年の「House of Voice」という節目のひとつになるようなアルバムがあります。これはもともとスターネットを主宰されていた故・馬場浩史さんのお声がけでプロジェクトが始まり、益子でのレコーディングに臨んだわけですが、様々な偶然が綺麗に重なり何とも奇妙で「生き物」のようなアルバムが出来上がりました(STARNET MUZIKAmazon等でお取り扱いしてます)。2日間のピアノ即興演奏をピックアップした内容なのですが、レコーディングを手伝って頂いた津田貴司さんのご協力もあって自分の作品のようであってそうでないような、ピアノの音のようでいてそうでないような、例えようのない変な音がしています。

おかげさまで細々ではありますが、「House of Voice」は未だにコンスタントに売れ続けているアルバムのひとつであり、私にとって非常に重要な経験を得る事のできた作品となりました。しかしながら逆説的ではありますが、以後この「House of Voice」との戦いがはじまる事となり、それは今現在も無意識的にずっと続いています。所謂「これを超えるようなアルバムを」というありがちなハードルを自分自身に課したわけです。でもそれって実はそう簡単にいかないものでして、そもそも比較するのもどうなのかという自問も多々あり、結局はその時の自分の技量や感性に日々挑戦し乗り越えていくしかない茨の道なのだと思います。

ということで昔話はここで一旦終えますが、今回の「ice of feelings」では架空のと称して自分の中であえて様々な音楽的な制約を作りました。それは曲の時間であったり、であったり、展開方法であったり。それはクライアントワークで生じる制約とは性質が違い、どちらかというと音楽の細かい構造やや形式に関わる部分が強い。例えば「抽象的な部分を出来るだけ排除しよう」とか、これまでだと自分の感覚に背かず勝手に手が動いたものを良しとしていたのとは逆を行ってみようとか、さらっと聞き流せないような曲にしてみようとか、禁欲的に様々な条件を付け、自分自身を疑い、迷い、掘り進めながらようやく制作したのが今回の「ice of feelings」です。もしもたった1曲のどこか数秒でも何か心に引っかかったり、響くものがあったならば、私はそれだけで幸いです。それ以前に聞いて頂いたことだけで感謝です。その上でご批判もお褒めもどちらも有り難く思います。いずれにしても私は気に入って頂いた方には「ありがとうございます」、そして気に入らないと仰る方には「ごめんなさい」としか申せません。そんな事で言い訳めいた言葉はさて置き、今や日本でも音楽配信の定額制が主流となりつつあります。例えばなどの既存のサービスを見ても明白ですが、もはや「アルバム」という形式に拘らなくても、作ってすぐにネット上に公開出来てしまう世の中ですから、不定期の日記のようにもう少し肩の力を抜いて作品作りをコツコツやるのもいいのかなと思っています。という事で実はすでに次に向かってすでに動いています。次のコンセプトも編成も決まっています。春にはまた完成のお知らせができると思います。ということでここ北海道はまだまだ寒い日が続きます。



畑中正人
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